それにしても最近の俺の躍進振りには目を見張るものがあるよ君。なにしろほら、この新しい名刺、見てくれよ、この端のとこ。ほーらよく見てみ、すごーく近くで目を凝らして見ても、ミシン目が、見えませんだろ? これがどういうことかわかる? わかりる? つまりね、これ、家庭用のプリンタで印刷したんじゃなく、印刷屋さんに頼んで作ったのです! わお、どうだい。参ったねえ。これじゃあまるで、本物のサラリーマンみたいだ!

それでさあ、この名刺の、僕ちゃんの上品な名前の前に書いてある2文字、これ、君読める? 漢字だけど読める? ほら、主任て、書いてあるだろ? いや、もう随分、かなり前から四六時中、俺は主任ではあったわけなんだが、いかんせん部下がいなかった。それがここに来て、遂に新人が入社。そう、君のことだよ。ねえ、知ってる? 部下より主任のほうが偉いんだぜ? 君は部下、俺主任。ね? だから、おい部下よ、俺のことは主任と呼べ、主任と。いいか、わかったな? よし呼んでみろ!

「ニャー」

惜しい! もう少し! うん、俺もそうだった。最初はなかなか言えなかった。まあ誰でも最初はこんなもんだ。緊張しちゃうんだよな? 大丈夫、そのうち上手に言えるようになるから。気にすんな。

いやーしかし名刺はかっこいいし俺は主任だし部下もいるし、ほぼ完璧と言ってもいいんじゃないだろうかね、この状況。たいしたもんだよ。まーあとはあれだ、給料が、こどもぎんこうけんから日本銀行券にさえなれば。