せっかくの三連休の一日目を家でゲームをして潰したことに、ちょっと思うところあり。いや、確かに俺は家が大好きだが、いつも家に帰ってきたときには何故か顔がにやついてるほど大好きだが、それにしても、あと二日も同じように過ごすってのは、いかがなものか。

だからそうだ、二日目は出かけてみる。冬物を買いに行こう。一人でってのも切ないので男友達に電話をかけると「うん、ちょうど暇だし、つきあうよ」だと。何言ってんだ、ちょうども何もねえだろ、おまえが休日暇じゃなかったことが、過去に一度でもあったのかよ。見栄を張るなよ。バレバレだぜ。

待ち合わせた池袋駅のホームで友達と二人、電車を待っていると、ひとつ向こうのホームを歩いているのは、あれ、職場の、あの娘じゃないか。

いやーなんつうんでしょう、俺が最近会社に行ってるのはこの娘に会う為と言っても過言じゃないんですから、わあ、今日は休日なのに、こんな偶然、いや必然? これは運命? いや宿命か? 神様は俺を試してる? なんだよ相変わらず可愛いなあ。ラケットなんか持っちゃってるよ素敵だなあ。そっかースポーツですよね、秋ですもんね。家でゲームとかしてる場合じゃないっすよねえ。

そうだ、声掛けよう! でも電車入ってきて遮られて届きそうにないし、なら電話! メール! で知らせようとしても、ああ、俺あの娘の携帯番号知らねえや。やべーもう階段降りちまう! くそ、こいつさえいなかったらすぐ走って追いかけるのに!

え、そうか? 俺ひとりだったら追いかけてた? こんな俺が? テニスとか、全然縁もないこの俺が? 下手したら三日間誰ともしゃべらないで家にいそうだったこの俺が? こんな俺に話しかけられて、嬉しいか? やあ、どっちかつうと、迷惑じゃねえのかなあ。

うだうだと自問自答をしているうちに、あーあ、見えなくなっちゃった。がっかり。神様ごめんなさい。俺はとんでもないいくじなしです。

そんな俺の奇妙な動きに疑問を抱いた友達が横から「おい、何してんだ?」って聞いてきたよ、アホ面で。これ以上はないってくらいの、アホ面で。ホームから突き落とす理由としては充分な程の、アホ面で。