おーい、オリベたん。いい子だからこっち来てごらん。あのさ、先週の忘年会でタッキーがサンタの服着てたろ? うん、女物の。あれ、明日の忘年会でオリベたん着たくない? 「えー…」 いや、あれ絶対かわいいって。だからオリベたん着たら似合うと思うんだよね。「えーでもあれ、結構露出多いじゃないですかあ…」 や、そんな、露出とかじゃなくて。かわいいかどうかってのが、重要でしょ? 「えーでも恥ずかしいですよう…」 恥ずかしくない。かわいい。かわいい。あれかわいいから。あれ着たオリベたん絶対かわいいから。ね、着てよ。後生だから。「いやですようー…」

くそ。説得失敗か。でも俺はあきらめないぜ。その場で酒飲ませておだて上げればなんとかなるんじゃないか。ちょっとみんな集めて打ち合わせとこう。


ところが当日、オリベたんは欠勤した。風邪だって。俺の野望は儚く散った。忘年会会場でがっくりとうなだれる俺。そこにまっつんがニコニコしながら寄ってきた。「あのー、サンタの服、あたしが着てもいいかなーなんて」着るな。息の根止めるぞ。あーまっつん、俺トイレ行くから、これ、俺のビンゴカード、代わりにやっといて。

つーか、ビンゴとかよ、俺、自信を持って絶対当たらないからな。博打の神様はどうやら俺が大嫌いらしい。そんな神なら俺のほうだって大嫌いだ。なんて、たかがビンゴゲームで自分の生き方のことまで考えながらトイレから戻ると、なぜかまっつんがオーバーアクションで興奮気味。 「ヤングさん1等ビンゴしました! X-BOXです!」 観衆が憎しみの表情で俺を見ている。そして巻き起こる大ブーイング。 「殺せ! 殺せ!」 亡者共が一斉に拳を振り上げこちらにドッと押し寄せる。俺はX-BOXに素早く手を伸ばし抱きかかえ、店の外へ飛び出した。タクシーをすり抜け通りを横切り、人ごみを掻き分け夜の銀座を必死の形相で走る走る。


明けて今日、会社に出るとオリベたんが先に来ていた。あれ、もう具合いいの? 「あ、もう大丈夫なんですけど…あの、サンタ…」

なんだ着たかったのかい?