「…で、わたしってよくコケるんですよね」

「はあ」

「すぐどっかにぶつかるし」

「あーそう」

「知らない間にアザできてるし」

「ふーん」

「今日もさっきそこで、ストッキング引っ掛けちゃって」

「え?」

「慌てて売店で新しいの買って、トイレで履き替えたんです」

「え、へえー、そうなんだ…」

「もったいないなー、ちょっと高かったやつなんですよう」

「あ、えと、ちなみに、破れたやつはどうしたのかな?」

「…鞄に入ってますけど?」

「あ、鞄に? さっきまで履いてたやつが、鞄の中に」

「そうですけど」

「あのさ、ちなみにだよ、それ、何色の?」

「肌色のです」

「ええー、そうなんだ。はあー、そうなんだ。そっかーうんうん」

「あの、それがどうかしたんですか?」

「いやーべつに、どうというわけでもないんだけどさ!」

「はあ」

「あ、そーだほら、俺の、甥っ子がさ」

「甥っ子?」

「そう、その甥っ子がね、小学生でね」

「はい」

「夏休みの…」

「え、夏休み?」

「工作で…」

「工作?」

「使うと思うから、その、破れたやつ、貰えないかな!?」

「えー…」

「や、だからあの、工作だし… 夏休みだし…小学生だし…」

「ほんとですかあー?」

「ほ、ほんとー…」

「ほんとにほんと?」

「ほ、ほんとーに、ほんとー…」

「なんで目をそらすんですかあ?」

「ほほほほんとー…」

「うふふ」

「んととととほー…」

「しょうがないなあ、じゃあ、あげます」

「え、マジ?」

「マジですよう。いらないですか?」

「い、いる! とっても嬉しい! …と思う、甥っ子が」

「そうですか、ならよかったです」

「うん! そうだねそうだよね」

「じゃああの、甥っ子さんに一言伝えてほしいんですけど」

「ああ、うん、なに?」

「この変態」