昨日さあ、会社から帰ろうと思ったら、俺の傘がなくなってたんだ。誰が持ってったのか知らないけど酷いよな、外はどしゃ降りだってのに。どうやら傘って、盗むことにあまり抵抗がない人がいるみたいだけど、そんなの俺には許せないよ。俺ってほら、これでけっこう真面目っていうか、ちゃんとしてるっていうか、そういう人なんだよね。

だから傘を盗もうとしたらビャーってなるようにしたらいいと思うんだ。盗んだ傘を開くと、ビャーって、なんか液が出て、犯人が浴びてしまうようにする。それは赤紫色の不気味な液で、もうとてつもなく臭いやつ。まるで陰獣の触手から出た液みたいなんだ。

もちろん傘の持ち主は、開く前に鍵を使ってビャー液が出ないようにロックするから平気なのね。でも俺はわりとそそっかしいから、忘れて開いて、浴びるかな。まあ雨の日にはたいてい浴びちゃう。でも傘泥棒をなくすためだったら、そのくらいしょうがないから我慢するよ。俺ってやっぱり真面目っていうか、ちゃんとしてるっていうか、そういう人だから。

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「あのー、あそこに座ってる、なんか変な液を浴びてて、すごく臭い人、なんなんですか?」

「あー気にすんな。あの人はそういう人だから」