さる機関の人がうちの機器を点検しに来てくれたんだ。まずは台所にあるやつを…ってとこで置いてあったコップが落ちてガッターン。あ、すいません! って言われて、あ、いや、割れてないし大丈夫ですよ。でも、そこの機器を調べるのに、ここのコップを落とすなんて、ちょっと不自然じゃないのかな。なにしろ俺、点検の邪魔にならないように、コップをどけておいたんだから。

次は風呂の点検。この煙突が抜けてたりすると危険ですからって、おじさんが触ったら煙突のつなぎ目が取れちゃった。すぐにはめ直そうとしたけどなかなかはまらない。だから煙突にもっと近付いてはめようとして、バスタブに乗るとき滑って転びそうになってるの。なにこの一連の全く無駄のない流れ。この人は天才か。

そんでまあなんとか点検は終わって、はいオッケーですなんて言って、おじさんは帰っていったんだけど。でも、あのー、あんなにそそっかしい人の出すオッケーの、なんと頼りのないことか。悪いけど信用できないわー。いま機器のスイッチ入れた途端に爆発しそうな流れだもん。俺は笑いに殉教する覚悟はできてない。普通の幸せが欲しいのよ。

本当にこれ大丈夫なのかって、最後におじさんが機器に貼ったシールを見ながら考える。使用上の注意が書いてあるシール。ずいぶん斜めに貼られちゃってる。