職場のあるビルの玄関にいる警備員は、どうやら重役っぽい人に対してだけ、挨拶の声が馬鹿みたいに大きいのだけど、あれってなんなんだろう。まさかサービスのつもりなのか。もし俺が重役だったとしたら、そんなのちっとも嬉しくないや。それだったら飴玉でももらったほうがよっぽどいいよ。まあ飴玉はちょっと子供っぽいから、さきいかでいいや。

それにしても、頑張って働いて、ライバルを蹴落とし、上司に媚びへつらい、汚職に手を染め、記憶にございませんと答弁し、数年間臭い飯を食って、やっと出てきて偉いポストに就いて得た報酬が、馬鹿でかい声で挨拶されることだなんて、まったくやってられないと思わないかい?だったら偉くなんてなれなくていい。安い給料もらって安酒飲んで、さきいか食ってりゃいいって気になる。

もっと重役ってのは、すごいものではなかったのか。大勢の社員をこき使い、湯水のごとく金を使い、秘書にはもっと舌を使えと命令する、そんな重役でいてほしい。ヒーロー不在と言われる昨今ではありますが、重役だけにはまだ、その神秘のベールを脱ぐことなく、いつまでも僕らみんなの憧れの存在であってほしいと願うのです。