キーンてならない

かき氷を食べて頭がキーンと痛くなるっていう、あれが昔からわからなかった。そんなのなったことないよ。でも漫画とかテレビでそういう場面が出てくるし、実際に目の前でキーンてなってる人を見たりすると、子供の頃はそれがうらやましかった。キーンてなるのにちょっと憧れてた。キーンてならない運命を呪った。

でもよく考えてみるまでもなく、そんなの痛くならないほうがいいに決まってる。これは生まれ持った特殊能力だよ。勉強やスポーツができるとか、顔がいいとか、そういう長所。これでもし、かき氷の食べ比べで優越が決まる世界でさえあれば、俺はヒーローだったのに! おしい! あとほんのちょっとだったのに!

そんな世界なら、かき氷を食べて苦痛に顔を歪めるクラスメートをよそに、すずしい顔して「なんでそうなっちゃうかなー」とか言っちゃうし。キャーキャー騒ぐ女の子たちに囲まれて「いやー、生まれつきだからなー」って。そんな調子だからモテるわ稼ぐわ出世するわ。稀代の英雄としてたてまつられるね。

そんで死後に出された伝記に、実は知覚過敏だったのを努力で克服したことが書かれてて、世界中が感動に打ち震えるね。