最近どうにも、仕事が暇で、退屈をもてあまし、どうにもやるせない。こう、あまりにも暇だと、私はろくなことを考えない。ひょっとして、自分は必要とされていない人間なのではないか? そんな馬鹿な疑問が頭をかすめ、気がどんどん滅入ってくる。

真っ白い紙を一枚、棚から取り出す。

あーあの頃は良かった、バブルの時代。私のような技術者は、引く手あまただった。随分と稼がせてもらった。年収は億を軽く超えた。しかしその後、バブルは弾け、景気は落ち込み、今じゃこのざま。「奴の仕事は何も生み出していない」などと、戯言を抜かす者まで出る始末。まさに不遇な扱いを受けている。

コピー機に紙を供え、ふたを閉じ、ボタンを押す。

未だに同じ職を続けている人間も、もう、数少ないと聞いている。だが私は、この仕事に誇りを持っているし、スキルだって相当のものだと自負している。過去に受けた数々の称賛の証は、今も自宅の応接間に並んでいる。

コピー機から吐き出された白紙を、おもむろにシュレッダーに差し入れる。

もう一度、あの輝きに満ちた日々を蘇らせるため、私はスキルに磨きを掛ける。コピーボタンを押すときの、恍惚の表情。シュレッダーに紙を入れるときの、魅惑的なポーズ。うん、いい。調子が乗ってきた。

よーし、今日はあと100枚だ。