数年振りに会った学生時代の友達、全員30代、そしてあろうことか全員デブ。なんだおまえらーその腹は。昔はそんなじゃなかったろうよ。俺達が目指した未来には、就職、結婚、その先には、そんな腹が待ってたのかよ。時の流れってやつはあまりに残酷過ぎるっつの。

デブAに「こういち、まだバンドやっとんか?」と聞かれ、一瞬考えてしまった。あーそうだ、そういや俺バンドやってた。忘れかけてた。たった2年前なのに。苦笑いしつつ「あー、もうやってないよ」と答えると、デブBが連れてきた女の子が「えーバンドやってたんだあ!」と言ってきた。

その言葉に覆い被さるようにデブCが「俺はDJやってたんだよ!」だって。おいおいなんだよデブCよ。いくら酒が入ってるからって、こんなタイミングでそんなこと言っちゃうか? ちょっと自慢げに見えるのは気のせいか?

バンドなんて誰だってできる。やるだけなら簡単だ。でもそれがモノになるかってのとはまったく話が別。DJだってそうだろ。なんだってそうだろ。俺がバンドやってた頃も、そんな風に「俺も昔やってたんだよ」なんて言ってくるおっさんいたよ。それを俺、心の中で馬鹿にしてた。だからなんだよ? って馬鹿にしてたよ。おまえはなんにもしちゃいねえって思ってたんだ、けど…





場所を移して2次会、そこに後からやってきたのはデブAの弟、なんと17歳。一回り違うじゃねえか。しかもその子、兄とは似ても似つかぬ文科系美少年。そんな歳の少年と話すのなんてあまりに久し振りで、緊張して下卑た笑いを浮かべつつ「将来は何になりたいの?」なんて陳腐な質問をすると、「渡部篤郎みたいな俳優になりたいんです」って返ってきた。

畜生、眩し過ぎるぜ。