駅を出たら雨が降ってた。霧みたいな、はっきりしないやつ。出かけたりなんてするんじゃなかった。なんだっていつもいつも、こんなことになっちまうんだろう。

あたりまえだが人が多い。うざい。歩道橋を渡るとき、すれちがう奴らみんな同じ方角を見てた。なんだ、飛行機でも落ちたのか。ひとりが見るとつられてみんな見る。あほか。右にならえか。見ない。俺は見ないよ。あいつらは、ねずみだ。あのまま笛吹きのあとをついていってひとり残らず崖から落ちるんだろ。おめでてーな。

でも、どうしてだろう。みんな、嬉しそうな顔してた。なんだかそれが気になって、ああ、ちょっとだけなら、見てやってもいいかもしれないって、思うけど、まだ、間に合うんだろうか。