世の中には二通りの人間が存在する。グラビア写真集を買う人間と、強烈な体臭の人間だ。体臭がきつくないしハゲてもいない俺は今、会社帰りに立ち寄った本屋の写真集コーナーの前にいる。スーツで写真集コーナー。これ、やってみるとわかるけど、相当の覚悟がいるぜ? これができるようになるのと引き換えに大事な何かを失った気がするけど、後悔なんてしちゃいないさ。そんなことより問題なのはこの、めざましテレビのお天気お姉さんの写真集を買うかどうかってことだ。

買うかどうか迷い悩みすぎて疲れたので、ちょっと本屋の中をぐるっと歩いてみたら、わーあ、職場の同じフロアにいる女の人が立ち読みしてるーう。え、もしかしてさっきの見られてないか? 純然たるエロ本ならまだしも、写真集はマズイ。中途半端だ。たぶんキモがられる。こんなことが噂になったら、今まで職場ではクールビューティーで通してきたはずの俺のイメージがガタ落ちだ。なんとかそれだけは食い止めないと!

「あ、どうもお疲れ様です。あの、えーとですね、写真集ってのは世間一般的には中途半端に見られがちではありますけどね、これがどうして、奥が深いと申しましょうか、ほらもう俺なんて実は裸より服着てたほうがいいんですよ! でもこれは決して俺が生温い性癖とかそんなんじゃなくて、逆に極めたっつうか、大人の男として更なる新しいステージに上がったとも考えられますよね? はい、つまりそういうことなんで!」

よし、なんとか切り抜けた。