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ちょっと頼みたいことがあって、お菓子持ってカシワバラさんとこ行ったんだけど、なんだか様子がおかしいんだ。あからさまに動作が怪しいぞ。なにか隠してるんじゃないのか。あ、もしかして昨日の健康診断で、なにか悪いとこでも見つかったんじゃないんですか?
「えー恥ずかしいから言わない」
じゃあお菓子あげる。
「ありがと。あのねー私、血液型がAからABに変わっちゃった」
えーーーーー!
この人どこまでも自由だよ。人間には超えられないはずの壁を楽々とぶち抜いてるもんな。そかー、出来ないと思ったらそこで終わってしまうんだな。常識に縛られちゃ駄目だよな。僕らはまだまだ可能性を秘めてるんだ。国境なんて人間が造った概念に過ぎないんだ!
「それでねえ、私今日からAB型だから、どういう性格になったらいいのか調べてるの」
えーーーーー!
なんかどっか間違ってるような気がするんだけど、まあ無理もないか。30過ぎて血液型変わったら誰だって混乱して当然だよな。昨日まで信じてたものはなんだったのかって話だよね。
「それはそうと、もうひとつショックだったのが、私この現場に来てから10キロ以上太っちゃった」
えーそれはすごいなあ。なんでですかねえ? あ、お菓子まだあるよ。はい。
「ありがと。なんでだろうねえ? ねえ違うのないの?」
あ、じゃあこれ違うの。はい。
「ありがと。あ、これ好きなんだー。もっとある?」
あるある。はい。
「ありがと。これ美味しいよねー」
ですよねー。じゃあもっとあげる。はい。
「ありがと」
もっと持ってこようか?