洗い物をしようとして台所に吊るして干してあった洗濯物をどけたら、それが落ちて鍋を引っ掛けて、汁が床にぶちまけられた。洗濯物と掃除機と、その他諸々が汁まみれ、具だくさん。

突然巻き起こったいたましい事件にしばし呆然。わーこれどうしよう。ひとまず煙草に火をつけてみた。ふー。えーと。じゃあこれから家を出て駅で始発を待ち、そのまま電車で知らない土地まで行って、そこで靴屋を始めるのもいいんじゃないか。ええ、ですからねお客さん、僕はただ、そのブーツの中で蒸されたホカホカのやきいもを口いっぱい頬張りたいだけなんです。だから御安心くださいね。全て私に任せてくださいね!

ほどなく店は潰れ、多額の借金だけが残り、僕は逃げるようにその土地を去る。そして久方ぶりに懐かしい街へ帰り、部屋のドアを開けるとそこには強烈な悪臭が充満していた。腐敗して抜け落ちた床、壁を覆い尽くす蔓、蠢く謎の生命体。

とりあえず煙草に火をつける。