インターネットって便利だよね。わからないことも検索すればすぐわかっちゃう。まさに知識の泉って感じだよ。ふーん、スカートとオーバーニーソックスの狭間に存在する空間のことを絶対領域って言うのかあ。また賢くなっちゃったよ、勉強になるなあ。じゃあ足首から先の部分は俺の領域ね。

そんなふうに検索でみつけた個人のブログに、寿司屋の情報が載ってたんだ。かなり良さそうな店で、しかもうちからかなり近いっぽい。こりゃあ行くでしょ。行ってみたよ。

まあ外から見た店構えは、確かに流行ってないっぽい。でも平気です、そのブログにもそう書いてあったから。迷うことなく突入。店の大将と思われるおじさんが客席のテーブルで新聞広げてる。客はいない。でも平気だよ、ブログに書いてあったもの。

「いらっしゃい!」
「あ、どうも」
「じゃあなんにしましょう」
「えーとじゃあおまかせで」

大丈夫。ブログ情報によると、おまかせにすればじゃんじゃん旨いものがでてくるって寸法なんすから。最初は鯛の汁。ンマーイ! それから握りが次々と。うん、旨いし、ネタが分厚くでかい。喜んでむしゃむしゃ食ってたんだけど、大将はなぜか奥に引っ込んだり出てきたりしてせわしない。お、これはもしや…と思っていると、やっぱりそうだった。

「ちょっとこれから、びっくりするようなものが出るからね」

来ました! あのブログに書いてあったアレが出るんだね! あーでも、ここで何が出るか知ってるなんて言えないよな。そんなのってなんか、雰囲気ぶち壊しだ。だから俺は、あえてこう言う。

「えーなんだろう!? 楽しみだなー!」

ちょっとわざとらしかったかなって思ったけど、あくまで俺はなにも知らない、初めて来た客って設定で。そして出てきた料理。やっぱりアレだ!やったね。驚いてないのに驚きのリアクションを見せながら食べて、大将の趣味の話なんかも聞かせてもらう。へえーそうなんですか、なんて言ってるけどそれもブログで読んだから知ってるんだよなー。これはなかなか演技力が要求されるよ。なんか悪い気がしてきたなー。

満腹になったのでお勘定。ブログのとおりやっぱり安い。すごく満足して店を出た。でも俺、役者には向いてない。