俺の隣と、そのまた隣の席に、新人の女の子が来たって話は前にしたよね。うん。来たけどね。だから昼休みとかに、同僚の男連中に、そう、いやらしい顔をしたやつらにね、訊かれるんだよ、「どうすか?」なんて。そんな、どうもこうもないっすよ。どんな子達かなんて俺にわかるわけないんだよ。だってなにしろ、俺、新人の子となんて、ほっとんど口を訊いてない。

そりゃ俺だって女の子とは話したいよ。ましてや新入社員。なにをかいわんや。彼女達はパンストを履いていらっしゃる。とても良いセンスですね。はい、私もそう思います。でも話せない訳がある。だって若い子となに話していいかわかんねーもん。無茶言うなよ。俺になにができるってんだ。俺がいまハマッていることって将棋だよ? こんなことならヨガでも習っとくんだったな。

そんなことを考えて悶々としている俺の横で、新人の女の子ふたりに、ちょっと離れた席から寄って来た新人の男、それと教育係の男、合計4人でキャッキャしてんの。みんなでチョコなんて食べちゃってさ。なにそれ! ちょっとは俺にチョコを分け与えてくれるそぶりとか、あってもいいんじゃないの? それが社会のルールとまでは言わないけど…けど…俺だってチョコが好きなんだけどな!

まあそんなことを言って泣きついた。喫煙所で。キノさんに。確かにそのとき俺はそう言ったけど。でもよー、ひでーんだよ。その数日後にあった職場の飲み会でさー、ああ俺は行ってないんだけど、その飲み会の場で、キノさんが新人の子に言ったらしいんだよ。「ヤングさんにもチョコあげなさいよ」って。げげー。そんな世話いらねー。まったくなんてことをしてくれたんだ。そんでキノさんの野郎に「チョコもらえた?」って訊かれたけど、えー、いやー、もらってないっすよ。

そこで気付いたのが、そういや新人は最近、プリッツばかり食べてるってこと。あー、なるほどー。チョコだと俺にあげなくちゃいけないから、プリッツをね。なんだそういうことね。

チョコじゃなくてプリッツだからあげなくていいっていう。

このはし渡るべからず。だから真ん中を渡りました。みたいな。

とんちで切り抜けたつもりなのか。

おまえら何休さんだよ!

って。

思ったよ。