新しく買った革靴を履いてちょっと歩いただけで、もう痛い痛い。下からくるぶしをガンガン突き上げられる。だから新社会人の君にひとつだけ忠告しておきたい。君はこれから幾度となく、重大な決断を迫られることになるだろう。が、とにかくまあ、2500円の革靴はやめとけ。

しかしなんとか会社にたどりついて、イケメンのハギワラさんに相談してみた。私はとんでもない靴を履いてきましたと。かつてこれほど会社に早く着くのを望んだことはないと。そしたらハギワラさんが、あーそういうことはよくありますねと。まあくるぶしがズルムケになる頃には足に合うようになってますよと。

そんなことをもしイケメンでないナカガワくんに言われたりしたら、そこまで我慢できるかこのボケが、俺の肛門にくちづけろ! となるところだが、これがイケメンに言われてみると、不思議と納得してしまう。なんかかっこいいっす! と思う。ズルムケのくるぶしこそが、足元のオシャレなような気がしてしまう。なるほどね。俺だって会社に向かうときにはまだ、このじゃじゃ馬を履きこなしてやる! くらいの気持ちでいたんだよ。

だけど帰り道、蓄積されたダメージは簡単に心をくじかせる。こんなん履いてたらくるぶし取れるわ!頭に来たから靴を脱いで、上から踏んづけたった。俺と靴、どっちが上の立場かわからせたほうがいいと思って。それからまた履いてみたけど、そんなことに屈する靴じゃなかったね。気持ちさっきより痛くされてるような。半泣きで歩きながら、やはり自分はイケメンでない側の人間だと思い知らされた。でもそんなことはもうどうでもいいんだ。君には理解できないかもしれないけど、スリリングな日々よりも、やさしさに包まれたいのよ。明日、ふわっふわの靴を買いに行こう。