職場では中産階級ブタゴリラどもがエアコンの温度をやたらと下げるもんだから、俺みたいに無力な寒がりはパーカでも羽織るしかないの。あいつらさらに扇風機回してやがるんだぜ。こっちは風邪ひきそうだってのに。いまこの時期にこんな調子じゃ、真夏が来たらやつらは焼け死ぬし、俺は凍え死ぬ。そんな狂った磁場の中、後ろの同僚がこんなことを言ったんだ。

「最近じゃあパーカって言わなくて、なんか別の呼び名があるみたいですよ」

なんだって! じゃあ俺がいま着ているのはパーカじゃないかもしれないの? じゃあ、これはなに? イカの沖漬けかなんかなの? 違うんだったら、なに、塩辛? とんでもないことになった。俺がパーカだと思って着てたものはパーカじゃなくて、イカをなんらかの方法で加工したものかもしれないなんて。世の中に確かなものなんて存在しないのか? 職場で沖漬けなんて着てたら臭くて迷惑だったんじゃないの? 言ってよー、もう! 変に気をつかわないで!

「そういえばスパッツも、別の呼び方があるみたいですよ」

それは知っとるわ!!

ってつい大きい声出しちゃったけど、言ったあとでなんか恥ずかしくなった。俺がレギンスのことをすごく好きだって思われたらどうしよう。ちょくちょくレギンスのことを考えてると思われたらどうしよう。レギンスでちまきを作りたいとか、レギンスで作ったハンモックで寝たいとか、山道でケガをしたとき、困ったな包帯がない…じゃあこれで代わりに…みたいなことを望んでるなんて勘違いされたらどうしよう! 俺そんなんじゃないのに! そんなこと! まったく! 興味ないのに!

君だけは信じてくれるよね?