ひさびさにひどい風邪ひいちゃって死んだかと思った。薬飲んで一晩寝ても治らないし、熱測ったら38度! あ、まあ君からしたら38度なんて珍しくもないありきたりの熱かもしれないけど、めったに高熱を出さない俺の38度つーのは、君にとっての10万38度くらいあるから。いたわれよな!

そんでふらふらで、家からいちばん近い内科に行ってみてげんなり。すごいボロい。床も壁も椅子もなにもかも古い。21世紀のトーキョーでこのリアルレトロな待合室って、こりゃもう変わり者の超名医かヤブかの二択じゃんね。そりゃあ俺だって元気があったらこんな状況にドキドキワクワクできたかもしらんけど、えっといま、たまたま最高に体調悪いんで、そういうのいらない、普通がいいの。だいたいなんだよ、あのテレビ。どうせ壊れて映らないんだろうけど、もし仮に壊れてなかったとしたら、点けたらぜったい力道山戦ってる。こんなテレビのある病院じゃ、エレキテルで治療されるかもしれない。

まあ呼ばれたんで治療室入って、とりあえず自分がいまどれだけ辛いかっていうのを余すことなく伝えきったつもりなんだけど。じゃあ熱測りましょうって、測ったら38度3分。3分増えとる! 明らかにここ来る前よりダメージ受けてるから。インフルエンザの検査をするってんで鼻水採られて、じゃあ結果出るまで待合室で待っててだって。待合室戻ってもう座ってられないから横になって、朦朧とした意識でいざとなったら救急車呼ぼうと携帯握り締めてた。やっと呼ばれたんでまた治療室行って、なんか薬出すって言われたけど、もっとこう、すぐ効いちゃう系のなんか、やってほしいっての、アピールしたつもりなんだけど、通じなかったみたいで、すごすごふらふら帰ってきた。

で、貰った薬飲んで寝たけど全然よくならないの。その憤りの力のみで体を引きずって別の病院行って、具合の悪さをわあわあ述べ立てて、じゃあ、先に行った病院ではどんな薬を処方されたのか聞かれて、

「これです」

「…これだけ?」

「はい」

「…これだけかー」