コンピューターおじいちゃん

こんなことが起きてから、母や妹から来るメールには、まあ、こういうことに注意しようねっていうようなのが書いてあるんだけど、その内容がデマ臭い。だからネットで検索してみたらやっぱりデマだってことがわかって。あー、そう、俺の田舎の家族はあんまりインターネットに触れてないんだよね。

やっぱり新聞、テレビ、周りの人からの情報の他に、ネットからも情報を得られたほうがいいと思う。こんなときにもネットはいろいろと便利だし。でもいままでパソコンに馴染みがなかった人にとって、まだいまのパソコンはとっつきにくいのかもいれない。

そこでまったく新しいパソコンを考えた。まず、いまのパソコンて見た目がなんか難しくて冷たい感じでしょ。もっと親しみを出すために、見た目をおじいちゃんにする。やさしい顔のおじいちゃんだから、誰にでも好かれるはず。おじいちゃんが何でも知っているように、おじいちゃん型パソコンもなんでもわかる。知りたいことをたずねれば、ググった結果をしゃべってくれるよ。

印刷してって頼めば、紙に筆で書いてくれる。ゴシック体なんかは無理だけど、でもすごい達筆だから。音楽を聴きたいなら歌ってくれる。演奏も含めて全ておじいちゃんの声で。そんで「最近の歌は難しいな〜」なんて言う。平成生まれのくせにね。それから動画はがんばって全員を演じようとするし、踊る。まあ30分もすると疲れて、「ちょっとタンマ」って休んで、「じゃあ続きは明日な」って晩酌やって寝ちゃうけど。

そんな感じで家族にすごい愛されるんだけど、ある日ちょっとした事件が起こる。おじいちゃん型パソコンッ子だったリョウタが、こんなことを言い出すんだ。

「おじいちゃんなんか嫌いだ! マサシくんちの女教師型パソコンなんか、エッチな動画もすごいリアルに再生するのに、おじいちゃんはそういうのできないじゃないか!」

するとおじいちゃんは少し悲しい顔で僕の頭を撫で、「ごめんなあ」と言ってチョコレートをくれたんだ。