不満と妥協

定食屋で店員の女の子に「今日の日替わりランチは何?」って訊いたら「え……少々お待ちください」って確認しに行っちゃった。なんで。だってそれ、昼時の定食屋で最も重要なことだよ。今日のランチが何かも知らずにフロアに立つなんて、武器を持たずに戦場に立つようなもんじゃないの。

そんでまあ注文して、料理が出てくるのを待ってたんだけど、なかなか出てこない。僕らのいるテーブルのすぐ後ろでは、フロアから厨房に向かってものすごい剣幕で怒鳴っている男の店員がいる。「この野郎、そうじゃねえだろバカ野郎! 違うんだよこの野郎バカ野郎!」って延々と。怖い。あの人は気が狂っているんじゃないかと思う。

それからしばらくしてやっと出てきた定食。僕はご飯を小盛りで頼んだのだけど、出てきたご飯は並盛りをよそったあとにそれをざっくりとえぐった形をしていた。うん。定食を無言でかき込んで、早々にレジへと向かう。

レジでは先ほど狂ったように怒鳴っていた店員が満面の笑みで待ち構えてた。そんでその人がカーディガンを着ていて、胸のワンポイントで熊がバンザイなんてしてんだよ。そんな可愛い服着て、でも身内にめちゃめちゃキレて、客には笑顔で。お金を払う僕の手が震えているのは寒さのせいじゃない。

とにかくいろいろと酷かった。何が腹立つって、その店が小奇麗で小洒落てるんだよ。だから小汚い店なら入る前からある程度の覚悟はできてるとこあるから、店員の対応が悪くても想定内なんだけどね。それが小奇麗な店で対応が悪いと、なんか騙されたって気になる。さわやかで優しそうな男性に突然殴られたようなショックがある。

しかしこんなことを言いながら、結局週一くらいで利用してしまうんだろう。だってこの店は職場から近いし、味と値段はこの辺の店の中ではそこそこだ。納得がいかない部分がありながらも妥協してズルズルと付き合いを続けるのは、こういう酷い店を助長させるだけで良くないことなのはわかってるのに。なんだかろくでもない男と別れられない女みたいだ。