タンクトップの怪

どこから話そうか。そう、俺がタンクトップに夢中になってることは言ったかな? ただ、自宅の中だけでね。タンクトップだけを着て外出することは妻に禁じられている。俺自身も「露出の暴力」という言葉の意味はわかってるつもりさ。でもまあ、夜中にゴミを出すときなんかは、暗いしすぐそこまでだし、いいかなって。うん、そのくらいはセーフだと思うし、次のゴミの日が待ち遠しい。

職場で仕事をしているときも、早く帰ってタンクトップを着たいって思う。あの解放感と適度な締め付けがクセになってる。待てよタンクトップがこれだけいいってことは、ホットパンツも視野に入れるべきなんじゃないか? 目の前に夢と可能性のドアが開く。その向こうにはおっさんの向こう側がある。そこでは年齢も性別も超えた人達が手を振っている。

ところが最近体調が悪い。風邪がずっと長引いている。そして肩の辺りがなんだか寒い。えー、これってまさかタンクトップのせいなんじゃ? 俺みたいなもんが調子に乗り過ぎたからバチが当たったのか? まさか袖の神様のお怒りに触れたとか? それならと試しにTシャツを着て寝てみた。すると翌朝はだいぶ体調が良くなってて、ほっとしながら鏡を見たら、Tシャツの両袖がちぎれたようになくなっていたんだそうじゃ。