遅刻はよくない。よくないよ。

約束した待ち合わせ場所、そこに阿呆みたいにたたずむ俺、クロス立ち。道行く女の子を眺めながら、頭の中では瞬時に○か×どちらかのプラカードをかざすシュバッシュバッ。お、冬なのにサンダル、アナタエライネ、二重丸!

つーか飽きた。寒い。遅い。まだ来ない。煙草に火をつけ、深く煙を吸いこみ、吐き出した瞬間に目が合った。若いんだか歳なんだかわからない男が近付いてくる。宗教家。やだ。だめ。祈らせない。あいつら結構したたかだぜ。服装が地味で気の弱そうな奴にばかり話しかけやがる。

つーか遅過ぎる。なんかだんだん心配になってきた。まさかここに向かう途中で事故にあったんじゃないかとか、悪い奴にさらわれたんじゃないかとか、怖い妄想ばかりが浮かんでくる。昔、遅れてきた女の子にそう話したら、「あたし、拉致られたことある」って言われ、あんときは正直引いたな…

おや? こっちに向かって一直線にやってくる皮のコートは…ああーやっと来たよ。なんだよさんざん待たせやがって。まったくもう、しょうがないなあ。しかしまあ俺も心の広い男ですから、今回だけは許してやるかなあ?

「すいませーん、結構待ちました?」

…チェンジ。