梨の誘惑

まあ、欲しいものはたくさんあるけど、いまいちばん欲しいのは、果物を送ってくれる親戚ね。これがなかなか手に入らないのだけど。

宅配の人が来たのでハンコを押そうとしたら、宛先の住所は確かにうちだけど、宛名が全く知らない人だった。だからこれ、たぶん間違ってるって言ったらあーそうですかってすぐ行っちゃったんだけど、でも、あの人が持ってた箱、確かに、梨が入ってる箱だった!

なんだよ最初から梨が来るってわかってたら、こっちだってもうちょっと違う対応があったのに。あの宅配の人も、俺が違うって言ったからって、そんなすぐに納得してすごい勢いで帰っちゃうことないんじゃないの。なんかもうちょっと、あの箱にたくさん入った梨を、俺が受け取っちゃっていいもんかどうか、二人で協議してもよかったんじゃないか。まあ玄関じゃなんだから、とりあえず上がってよ。いま梨剥くからさ。

ああもう悔しい。せめてあの梨の種類だけでも確認しとけばよかった。あれが豊水だったら好きじゃないからどうでもいいけど、もし幸水だったとしたら、悔やんでも悔やみきれないな。